2021.04.24 1日350円で乗り放題!「台東・墨田東京下町周遊きっぷ」で行く下町散策(三ノ輪編)
下町で使える1日あたり350円のフリーパス「台東・墨田東京下町周遊きっぷ」。今回は再び台東区に戻り、様々な歴史が交錯する町、三ノ輪・竜泉・日本堤一帯について紹介していきたいと思います。
都電荒川線の終点にして、昔ながらの歴史が残る三ノ輪。樋口一葉の「たけくらべ」の舞台となった竜泉・千束。かつて日雇い労働者の街・山谷として知られ、漫画「あしたのジョー」の舞台となった日本堤。三者三様の歴史が凝縮された台東区東端の様子をお送りします!
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路面電車と商店街があるノスタルジックな街・三ノ輪。安くて美味しい昔ながらのパン屋も
前回北千住から歩いて到着した、三ノ輪橋商店街入り口へ。左手にある「梅沢写真会館」の建物は1927年建設。今も現役バリバリの写真屋さんですが、元々は都電荒川線の運営会社・王子電気鉄道の事務所だったそうです。
ビルの下を通って向こう側へ。両側のお店は訪問時には閉まっていましたが、営業しているとそれなりに賑やかです。
梅沢写真会館の先には、都電荒川線の終点・三ノ輪橋駅が。終点らしく整備にも力が入ってますね。
停留所付近には昔の看板も飾られ、ノスタルジックさを醸し出しながら手入れは行き届いています。東京の観光案内でもよく取り上げられるカットです。
また、路線のすぐ脇には商店街「ジョイフル三ノ輪」があり、昭和の雰囲気が漂うアーケード街を見ることもできます。業務スーパーとか100円ショップとかも入っているので、結構実用的なショッピングスポットです。
ここで、オススメのお店を1軒。昭和風の看板が街並みにマッチしている「パンのオオムラ」さんです。
かなり絞り込まれたラインナップながら、毎日ハイペースで売れていく人気のパン屋さんです。訪れる頃にはお目当てのパンが売り切れ、ということもしばしば。
今回は180円のカツサンドを注文。売れる理由はすぐにわかりました。特別な差別化要素はないものの、市販の惣菜パンにありがちなパサパサ感を感じさせない生地に、手ごろなサイズのカツがよくマッチしています。180円というお値段も手に取りやすい理由の一つかも。ジョイフル三ノ輪に着いたらとりあえず寄ってみたくなるお店です。
この辺で商店街を後にして南へ。三ノ輪の南東に隣接する旧山谷・台東区日本堤へと向かいます。
日本3大ドヤ街のひとつ、山谷。日雇い労働者の時代から営業するコーヒーの名店も
漫画「あしたのジョー」の舞台として一躍有名になった、山谷のドヤ街。元々は日雇い労働者がメインでしたが、最近のインバウンド需要によって「安くて安全な宿」として海外でも知られています。実は三ノ輪から徒歩圏内にあるのをご存知でしょうか? 隠れた名店もあるこの一帯を散策してみました。
漫画「あしたのジョー」で象徴的存在として扱われた「泪橋」。実際は暗渠となっているため、交差点の地名として残っています。南千住駅から南下すると泪橋を通り、その先が山谷になります。南千住から歩いてみて、矢吹丈の気持ちを体験しても良さそうですね。
現在の山谷は、ホテルが目立つこと以外は普通の町、と言った感じで、西成のような日雇い色はあまり強くない気もします。実際、山谷での日雇いの仕事はかなり少なくなっているそうです。
あしたのジョーの舞台としても知られる、いろは会商店街。2017年ごろまではアーケードがあったのですが、現在は撤去されて青空が広がっています。かつては賑わっていたそうですが今は寂しい感じがしますね。
商店街の入り口には矢吹丈の像も。
商店街の雰囲気が変わっても、ここが山谷の歴史が詰まった場所であることは変わりありませんので、散策してみると色々と発見があるかもしれません。
歩き回ったので、この辺で一休みすることに。訪れたのは南千住から泪橋交差点を渡った先にある喫茶店「カフェ・バッハ」さん。50年以上営業している老舗で、元々食堂だったお店を1968年に現オーナーがカフェに改装したのが始まりだそうです。看板にもコーヒーを持ったバッハの絵が。
注文したのは、バッハブレンドと季節のケーキ。訪れたときはビテールというケーキでした。他のカフェにありがちなセット割りなどはないため、ケーキを頼むと1,000円超えるのがちょっとツライところ。コーヒーに絶対の自信を持っている証拠と言えるでしょう。
今回はブレンドコーヒーをオーダーしましたが、様々な地域のコーヒを豆から販売しており、中には中国雲南産というあまり聞かない産地のものも。スタッフの方いわく、オーナーが中国に足を運んだ結果、栽培されるようになったコーヒー豆だそうです。コーヒーに対する情熱が伝わってくるエピソードですね。
ケーキの方は、サクサクした見た目に反して、結構甘味が強め。コーヒーのミルクが少ないので、このくらいの味がちょうどいいかもしれません。ケーキを頼むなら、砂糖も控えめにしておきたいところです。
ちなみに店内は撮影NGですが、今は使われていない大型焙煎機のみ許可をいただけましたので1枚。カフェとしての雰囲気は、それなりに席に余裕を持たせているかな、という感じです。コーヒーをポットで提供するメニューもあるあたり、長居しやすそうなお店です。クラシック好きな方を連れてきても喜ばれそうですね。
良い意味で、山谷の雰囲気にはおよそ似つかわしくない、カフェ・バッハ。知り合いと来るもよし、コーヒーを楽しむもよし。プレゼント用に珍しい豆を買うのもオススメです。
樋口一葉の小説「たけくらべ」の舞台。新吉原があった台東区千束・竜泉を歩く
江戸時代に遊郭があった場所として知られる、新吉原。浅草の裏手にあることは有名ですが、実は三ノ輪・山谷に隣接していることはご存知でしょうか。樋口一葉の小説「たけくらべ」の舞台にもなったかつての歓楽街の名残を、少しだけご紹介します。
都電荒川線三ノ輪橋駅から徒歩3分、日光街道を挟んで向かい側にある浄閑寺。吉原遊郭で亡くなった遊女が葬られたという「投げ込み寺」として有名なお寺です。
境内には遊女のための慰霊塔の他、山谷の労働者のためのひまわり地蔵尊なども建てられています。
関東大震災や東京大空襲で亡くなった遊女も祀られているという、浄閑寺。人知れずひっそりと世を去っていった方々に、思わず手を合わせたくなるスポットです。
続いては浄閑寺から少し南下し、吉原大門方面へ。ガソリンスタンドの目の前にあるのが「見返り柳」です。朝、吉原を出るお客が振り返ったと言われる場所で、現在は碑が建てられています。
ちなみに柳の方は結構ほっそりとしています。どうやら枯れるたびに柳を植え替えているらしく、樹齢数百年・・・というわけではないそうです。ガソリンスタンドの右手が吉原大門への道です。
左側の標識の通り、くの字型になった道路が特徴で「五十間道」と呼ばれています。この先が吉原になりますが、普通の住宅街の中に風俗店がいきなりあるなど、ちょっと異様な街並みが特徴です。赤線の灯が消えてからまだ60年余り。痕跡が残っていても不思議ではないのかもしれません。
ちなみに吉原は様々な文学作品の題材にもなっており、樋口一葉の小説「たけくらべ」もその一つです。その縁もあってか、台東区竜泉には「樋口一葉記念館」があります。東京・ミュージアム ぐるっとパスがあれば入場できますので、他のスポットに寄る予定があれば買っておくとお得です。
24歳で早世した樋口一葉ですが、評価の高い小説を書いていたのは晩年の2年間くらいというのも驚かされます。ちょうど生活苦で困窮していた時期と重なるあたり、「にごりえ」や「たけくらべ」の作風にも影響しているかもしれません。
ちょうど吉原大門の手前に位置する、台東区竜泉。立場上離れ離れになることが約束された少年少女の切ない恋に思いを馳せながら、散策してみてはいかがでしょうか。
今回は隣接していながら三者三様の街、三ノ輪・竜泉・日本堤をご紹介しました。都心にありながらどこかうらぶれた雰囲気もある一帯ですが、狭い区域に驚くほどの歴史が詰め込まれた場所でもあります。移動の際は台東区のコミュニティバス「めぐりん」も使いやすくオススメです。
次回は上野・浅草から南へ。問屋と屋形船の街、浅草橋・蔵前をご紹介します!