2023.01.11 瀬戸内海の「ウサギの島」が辿った紆余曲折の歴史とは? 徒歩での散策が楽しい広島県・大久野島の魅力
瀬戸内海に浮かぶ、広島県・大久野島。様々なメディアで「ウサギの島」として紹介されており、県内でも人気の観光地となっています。しかし、現在のような平和な島になるまでは様々な紆余曲折があったのを、ご存知でしょうか。
今回は、2023年「卯年」の1回目の記事として、大久野島の様子を写真付きで紹介したいと思います。心が和むうさぎ達と、後ろ暗い遺産を併せ持つ、島の魅力をお送りします!。
鉄道とフェリーでアクセス可能。瀬戸内海に浮かぶ”うさぎの楽園”大久野島の魅力
まずは概要から。大久野島は瀬戸内海に浮かぶ0.7平方kmの島で、広島県竹原市に属しています。休暇村や資料館などもありますが定住者はいないため、行政上は「無人島」として扱われています。
最寄駅はJR呉線の忠海駅で、東京・大阪・福岡などからは新幹線で三原駅まで来るのが便利です。今回はスケジュールの都合で、尾道駅から出発しました!

今回の起点となる、広島県の尾道駅です。JR山陽本線の主要駅の一つで、新幹線停車駅の福山駅から在来線で来ることもできます(新尾道駅の方は在来線がないので注意)。尾道駅自体も千光寺公園やしまなみ海道などで有名な場所ですね。

尾道駅から三原駅はJR山陽本線、三原駅からはJR呉線で移動します。山陽本線が広島までは山間部を走るのに対して、呉線は主に沿岸部を通ります。

呉線のダイヤ。広島側は通勤路線のためそれなりに本数がありますが、三原側はJR山陽本線と比べると本数が少ないので、事前に時刻表を調べておくとスムーズです。

大久野島へのフェリー乗り場最寄駅となる、忠海駅に到着。忠海と書いて「ただのうみ」と読みます。

フェリー乗り場がある忠海港は駅から近く、徒歩数分の距離です。大久野島の他、愛媛県の大三島にも行くことができます。

切符売り場の他に売店も併設されているので、帰りがけにお土産を探すのも良さそうですね。

建物のほぼ目の前にフェリーが到着。この辺の駅チカ感はなかなかのものですね。旅程によっては車より電車のほうが便利と言えるかもしれません。

運賃は高くなりますが、フェリーに車ごと乗り入れることも可能です。大三島側のフェリーターミナルが不便な場所にあるので、そちらに行くなら車がオススメです。

瀬戸内海の美しい風景を眺めながら大久野島へ。3km程度の短い船旅ですが、雰囲気出ています。

ウサギの島・大久野島に到着。島内には休暇村(ホテル)もあり、シャトルバスも運行しています。

大久野島の地図。1周3.3kmという広すぎず狭すぎない距離感がいいですね。徒歩で散策したくなります。

瀬戸内海の島らしく、海が本当に綺麗です。晴れている日は写真のような風景が見られます。

そして、大久野島最大の観光資源・ウサギの姿も。奈良公園や宮島の鹿並みにいたるところでくつろいでいます。好きな方にとっては、島全体がシャッターチャンスと言えるでしょう。

大久野島のウサギは人に慣れているせいか、向こうから寄ってくることも多いです。

中には膝に乗ってくる積極的なウサギさんも。

ちなみに大久野島のウサギは全てカイウサギ(家畜化したアナウサギ)だそうで、島内ではウサギが掘った穴がいたるところにあります。足元にはご注意を。

あまりにも掘り過ぎて、ミステリーサークルみたいになっている場所も。

巣穴もよく見かけます。人は定住していないがウサギは定住しているというのが何だか微笑ましいですね。


年間を通じて多くの観光客が訪れるためか、人に関心を示すウサギさんが多い印象です。

溝にはまってご満悦のウサギさん。人工物との対比が面白く、思わず撮ってしまいました。




瀬戸内海の穏やかな日差しの下で思い思いに寛ぐ、大久野島のウサギたち。離島という比較的天敵が少ない環境で、のびのびとしているのが伝わってきます。
かつては毒ガスの島だった? 要塞島だった大久野島がウサギの楽園になるまで
さて、ここからは大久野島を語る上で避けて通れない、もう一つの側面をご紹介します。今でこそウサギが寛ぐ癒しの島として知られていますが、戦前は毒ガスを製造していた場所として島全体が軍事機密であり、地図にない島でもありました。現在、大久野島には2つの資料館のほか、様々な戦争遺跡があり、当時の様子を知ることができます。

大久野島ビジターセンター。瀬戸内海に浮かぶ大久野島の歴史と自然を展示しています。もともと大久野島は瀬戸内海の海賊島の一つとして文献に登場しており、平忠盛(平清盛の父)によって平定されたため、島の北側の海を「忠海」と呼ぶようになったのだとか。駅名にも由来があり、ただの海ではなかったわけですね。

そして、大久野島の負の遺産を今に伝える、大久野島毒ガス資料館。1929年から15年間にわたって行われた大久野島の毒ガス製造の資料のほか、海外での毒ガス使用に関する資料も一部展示されています。

ちなみに現在島にいるウサギは、戦後になって放し飼いにされたウサギが繁殖したものと言われ、戦前に実験動物として飼われたウサギとの関係はないそうです。それでも展示を見た後だと、一瞬どきりとしてしまいますね。


また、毒ガス資料館の他に、実際に毒ガスを保管していた遺構もいくつかあります。基本はどれも立ち入り禁止で、外から眺める形になります。

心ない落書きが、不気味さをいっそう引き立てていますね。

その他、明治に入ってから島全体が要塞化されていたこともあり(芸予要塞の一部だそうです)、砲台跡などの戦争遺構も残されています。


毒ガス保管所と比べると、どれも手入れが行き届いている印象です。そのうち島自体が史跡に指定されるかもしれないですね。

最後は島を一周して発電場跡へ。島内最大級の遺構で、毒ガス製造時に電力を供給するために建てられています。

瀬戸内海の美しい風景にはおよそ似つかわしくない、戦争という過去。愛らしいウサギが駆け回る今の姿を見ると、平和のありがたさについて思わず考えてしまいますね。

島内を一周して、元の港へ。2時間くらいあれば一通り見られるでしょうか。午前中は尾道や竹原を観光して、午後に来ても良いかもしれないですね。

かつて「海賊の島」として歴史に登場し、軍事要塞や毒ガス工場としての歴史を歩んだ、大久野島。今「ウサギの楽園」として平和な時を刻むこの島に、卯年となる2023年を記念して、一度訪れてみてはいかがでしょうか。
※ウサギはデリケートな動物です。島を訪れる際は、マナーを守ってふれあいましょう。ウサギからのお願いはこちら
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