2021.07.25 昔の晴海には鉄道が走っていた!? 越中島支線と廃線跡を辿る東京ベイエリア散策(2)
小岩駅・亀戸駅と越中島貨物駅を結ぶ、越中島支線。今回はその先の、1989年に廃止された東京都港湾局専用線の廃線跡を散策します。再開発によって少なくなったとはいえ、今も当時の遺構を残す豊洲〜晴海付近。路線の紹介とセットでお送りします。
元々は万博予定地として整備された晴海。戦後の貨物輸送から現在の再開発まで
現在、東京オリンピックの選手村があることで知られる、中央区晴海。元々は1940年の日本万国博覧会の予定地として整備され、勝鬨橋もそれに合わせて架橋されたという歴史があります。
結局日本万博はオリンピック共々中止されましたが、戦後は貨物輸送の拠点として晴海埠頭が使われるようになり、1957年に晴海線を建設して、埠頭まで鉄道が乗り入れるようになりました。また、1959年には東京国際見本市会場もオープンし、1996年まで様々なイベント会場として使用されましたが、貨物線自体は輸送がトラック主体になるにつれて使われなくなり、1989年に廃止されています。
2000年代以降は、都営大江戸線の開業や晴海トリトンスクエアのオープンによって、オフィス街・住宅街としての需要が増えつつあり、かつての貨物輸送・イベント用地から大きく変化しつつ、現在に至ります。
それでは、歴史の説明はこのくらいにして、越中島貨物駅から晴海までの廃線跡を歩いてみましょう。
最大の遺構「晴海橋梁」をはじめ、かつての跡が残る東京都港湾局専用線。沿線には野ざらしになっている線路も
前回到着した、京葉線の潮見駅からスタートします。JRの越中島貨物駅の最寄り駅でもあります。
潮見駅から越中島貨物駅方面には橋が架かっているので、そちらを通ります。
歩道専用橋であり、それなりに高さもあるため、東京都港湾局専用線の廃線跡を上から眺められるスポットだったりします。
橋の下には、横に長〜い駐車場が。いかにも何かありげな雰囲気です。
また、越中島貨物駅の西側は京葉線が地下から地上に出るスポットだったりもします。写真の右側、トンネルがある方の路線が京葉線ですね。
橋を降りて辺りを散策すると、柵で囲まれた空き地に「都有地」と書かれた看板が。何か転がっていますね。
近くで見ると、なんと線路でした。これが果たして廃線跡なのでしょうか。越中島貨物駅との位置関係で見ると、確かにルート上にあります。
反対側からも一枚。空き地の先には何軒か住宅があり、その向こうに貨物駅があります。線路跡の一部を居住区として売却したと考えれば説明はつきそうです。
果たして、野ざらしになっている線路は本当に東京都港湾局専用線の路線なのでしょうか。ここだけ都有地になっているのも謎が深まりますね。
ちなみにその他の土地は、何もない空き地や駐車場になっていました。この辺はgoogleEarthの航空写真とか見ると分かりやすそうです。
また、場所によっては真新しいマンションが建って、痕跡が完全に消えているところも。再開発のペースが早いため、跡地もすぐ活用されるのが東京らしい気がします。
続いては、川の方に目を向けてみましょう。一見普通に見えますが、よく見ると線路を通した柱が残っていますね。
ズームでもう1枚。左側に見えているのが、かつて線路を通していた橋脚です。
もしかしたらコンクリートが底でつながっていて、完全撤去するのが難しいのかもしれません。目立たない遺構ながら、ルートを知る手掛かりとしては十分でしょう。
線路跡の先、今は歩道になっている道を豊洲方面へ進むと・・・。
足元に埋め込まれた線路がありました。この辺りは豊洲方面と晴海方面にそれぞれ線路が伸びており、その分岐点となった場所です。今回は晴海方面に行ってみましょう。
豊洲の再開発エリア付近。写真には撮っていませんが、ららぽーと豊洲、スーパービバホーム豊洲店などの大型商業施設が付近にあります。
先程の分岐点から歩くこと約10分。今回の目的地・晴海橋梁が見えてきました。
晴海橋梁は東京都港湾局専用線の建設時に架橋された、付近の廃線跡の中では最大の遺構になります。現在では、すぐ横に歩道・車道用の橋が架けられていますね。
1989年の廃線時に撤去するという話もあったそうですが、結局30年以上、そのままになっています。現在では産業遺産として残す話も出始め、維持管理のための工事をするとかなんとか。そのうち昭和遺産とか名前がついて、ありがたがられるかもしれません。
単線ながら、なかなか立派な橋です。確かに取り壊すには惜しいかも。
線路の様子からしてもほったらかしということはなく、ちゃんと手入れをしてそうです。
橋の先には、かつて鉄道駐留用の線路が何本もあったそうですが、現在は再開発されて公園に。残念ながら、晴海自体には当時を偲ばせるものは残っていないようです。
選手村もオリンピック後はマンションに転用されるなど、一大ベッドタウンの様相を呈しつつある、晴海エリア。2020年からは都心とのBRTも運行を開始するなど、交通の利便性向上に力を入れています。近い将来、銀座に程近い高級タワマン街として名を馳せるかもしれないですね。
かつて豊洲・晴海に敷設されていた廃線跡の散策、いかがだったでしょうか。埋立地からイベント用地、埠頭、住宅地へと目まぐるしく変化を遂げる様子からは、生きている都市のダイナミズムのようなものを感じとることができます。都内の鉄道遺構は案外身近なところに隠れていることも多いので、気になる方は地図を片手に、都内散策に出てみてはいかがでしょうか。