2021.07.15 昔の晴海には鉄道が走っていた!? 越中島支線と廃線跡を辿る東京ベイエリア散策(1)
昭和の初めごろに整備され、現在東京オリンピックの選手村が置かれている、中央区晴海。島の周囲には大江戸線勝どき駅、有楽町線月島駅、ゆりかもめ新豊洲駅などがありますが、晴海自体も1989年まで鉄道が通っていたのをご存知でしょうか。東京都港湾局専用線という貨物線で、今も沿線にはいくつかの遺構が残されています。
今回は、現在も運行中の越中島支線(小岩駅-亀戸駅-越中島貨物駅)も含めて、亀戸から晴海まで散策してみました。昭和初期〜中期の遺構が残る沿線の様子を、前後2回に分けてお送りします。
首都高と貨物線の立体交差。昭和4年建造の鉄橋も見どころの「堅川河川敷橋梁」
本日の散策の起点、亀戸駅へとやってきました。JR中央総武線・東武亀戸線が乗り入れている駅で、小岩駅始発の越中島支線が総武線と分岐する駅でもあります。
駅前はバスターミナルでもあり、隣の錦糸町駅と合わせて多くの都バスが発着しています。日暮里駅、葛西駅、日本科学未来館など比較的長距離の路線も運行されています。
北口の通りは商店街で、歩行者天国も実施されています。亀戸梅屋敷、亀戸香取神社、亀戸天神社などに続く下町のメインストリートの一つです。
今回は北側には用がないので、亀戸駅のガード下をくぐって南へ。
高架線は2本あり、奥が中央総武線、手前が今回取り上げる越中島支線になります。
中央総武線は快速こそ停まらないものの多くの本数が運行されており、通勤時間帯は非常に混み合う駅として知られています。東武亀戸線→浅草から東京メトロという混みにくい裏道も一応ありますが。
対する越中島支線は貨物線ということもあり、あまり電車を見かけません。高架も単線ですね。
亀戸駅の線路を抜けて、京葉道路へ。西の錦糸町方面を見ると、先程の貨物線が見えます。
旅客扱いもなく架線もないので「なんの路線だろう?」と思った方もいらっしゃるのでは。実は非電化路線としては都内唯一だったりします。
よくよく見ると高架の先の用地は複線分確保されていますね。ここからは線路に沿って進みます。
貨物線に沿って南下すると・・・。
T字路にぶつかりました。電柱の向こうに見えるのが1929年建造の「竪川橋梁」です。
鉄橋のみで歩道はないので、少し迂回します。
堅川は1659年に開削された運河で、現在では一部を暗渠化し「竪川河川敷公園」として整備しています。真上を首都高速7号小松川線が走っているのも特徴です。
公園の下からは、首都高と竪川橋梁の立体交差を、間近で見ることができます。ギリギリの高さにしているあたり、首都高速建設時の苦労が偲ばれますね。
橋自体も複線ながら、使われているのは片方のみ。もし複線化するとしたら旅客化する時でしょうが、果たして。
一通り散策した後、竪川河川敷公園を抜けて南へ。整備も行き届いていますので、近くを訪れた際はぜひ。
元々は貨物の一大拠点だった小名木川駅。跡地はショッピングセンターに
竪川を抜けると、付近も住宅が目立つように。写真のように狭い路地を通る高架もいくつか見かけます。
いかにも戦前、という感じの煉瓦造りです。貼り紙の存在が、ここがJR東日本の管轄であることを思い出させてくれます。
西大島駅と、交差点上にある江東区総合区民センター。江東区でも一際下町感がある都営新宿線沿線ですが、交通の便は悪くなかったりします。西大島の場合、東京メトロ住吉駅、JR亀戸駅がいずれも徒歩圏内というのも大きいですね。
西大島駅から南へ5分ほど歩き、小名木川へ。
人通りも少なく、川沿いには遊歩道もある静かな場所です。密を避けて散策できるので案外オススメかもしれません。
白い橋桁が先程の堅川橋梁と対照的な、小名木川橋梁。同じく1929年の建造のためか、色以外の作りは堅川橋梁と似ていますね。
こちらも複線用の幅が確保されていますが、使われているのは片方のみです。
足元の緑が涼しげな、年季の入った煉瓦。関東大震災後に建てられた建造物って、垢抜けてない独特の魅力があるような気がします。都内にもたくさん残っていますので、探してみると面白いかもしれません。
小名木川から線路沿いに南下すると、左手にショッピングセンター「アリオ北砂」が見えてきます。
アリオ北砂は1929年から2000年まで存在した貨物専用駅・小名木川駅の跡地を再利用しており、2010年にオープンしました。小名木川駅の頃は貨物だけでなく車両輸送も担っていた一大ターミナル駅だったそうで、小名木川南岸から南北700mくらいの敷地があったようです。
ちなみに、付近には月に一度の「ばか値市」で知られる砂町銀座商店街もあり、駅から遠い立地ながら商業激戦区だったりします。商店街とショッピングモールで役割が被らないのもいいですね。
再び線路沿いに南へ。この辺で間近で線路を見られるスポットがあるのでご紹介しましょう。複線用用地を利用して整備された「南砂線路公園」です。東西線南砂町駅からは徒歩15分程度になります。
柵はあるものの、遊歩道のすぐそばを線路が通っているのが特徴で、運が良ければ貨物列車が走っているのを見ることができます。
南砂鉄道公園を過ぎると、そろそろ終点が見えてきます。写真は永代通りと交差する貨物線の踏切。地下を東西線が走っており、南砂町からも徒歩数分の立地です。
本当は写真だけ撮って先を急ごうとしたのですが、貨物用のディーゼルカーがやってきました。越中島支線は基本は平日3往復という都心とは思えない過疎ダイヤで、偶然出会うのは結構な幸運と言えるでしょう。
後ろに長〜い荷台を引き連れて、目の前をのんびりと通り過ぎてゆきます。これで運行本数が多かったら結構なストレスになりそうなので、1日3本は正解かもしれません。
永代通りを抜けてさらに南へ。ここまで来ると住宅は少なくなり、倉庫やトラックが目立ってきます。
永代通りから歩くこと10分強、終点の越中島貨物駅に到着しました。東京メトロの深川車両管理所、JRバス関東の東京営業所も近くにありますが、貨物扱い自体は既に終了しており、業務用のターミナル駅といった立ち位置となっています。なお、越中島と名前はついていますがJR京葉線越中島駅からは距離があり、JR京葉線の潮見駅の方が近いです。
ここからは少し迂回して、南にある砂潮橋を通ります。川の向こうには僅かながら越中島貨物駅を望むことができます。
京葉線が見えてきました。ルート的には越中島-潮見間で地上に出てくるため、この辺では高架を走ります。
越中島貨物駅から歩くこと十数分、潮見駅に到着しました。ここからは晴海方面へ向かいますが、かなり歩いたので一休み。続きは次回にしましょう。
今回は、亀戸から潮見にかけて、戦前の建造物が残る越中島支線をお送りしました。次回は越中島貨物駅から晴海にかけて、現在も残る東京都港湾局専用線の廃線跡をご紹介します。