2019.11.24 北海道2,000kmの旅(6) -最果ての牢獄。網走監獄に見る北海道レトロの意匠-
前回は、オホーツク海沿岸の流氷の町・紋別市の様子をご紹介しました。今回は、さらに東の北海道・網走市まで移動します。全国区の知名度を誇る網走監獄のほか、道中の能取湖なども併せてお送りします!
第1回 新千歳から稚内までのドライブの様子はこちら
第2回 稚内駅の様子はこちら
第3回 宗谷岬の様子はこちら
第4回 宗谷丘陵と紋別市内までのドライブ
第5回 紋別市内で見る北海道遺産・ガリンコ号
断崖の岬と絶景。秋には花の絨毯が美しい「能取湖」

今回目指す網走市は、紋別市から国道239号線を通って約100kmの位置にあります。途中サロマ湖、能取湖という湖を通りますが、今回は網走監獄を見る時間を確保するため、能取湖のみの立ち寄りとしました。早速出発します。

前回ご紹介したオホーツク流氷センターから車で移動開始。網走までの所要時間は、寄り道なしで約2時間です。

道中は写真のような風景が続きます。町の間はひたすら原野なのが、オホーツク沿岸。

途中・道の駅サロマ湖で小休止。サロマ湖は幅25kmある日本最大の汽水湖です。海を隔てる細長い砂州が特徴ですが、見に行くにはかなりの寄り道をするため、今回は断念。湖の東の方はワッカ原生公園として北海道遺産にもなっています。

道の駅サロマ湖から車を走らせること1時間、能取岬に到着しました。網走駅の北、能取湖の北東に位置する岬です。

能取湖畔にはサンゴ草という赤い草が自生しています。時期が良ければ一面を埋め尽くすほどですが、今回はそうでもないです。残念。

灯台自体は目立ちやすい白黒二色になっている普通の作りですが、ここはオホーツク沿岸。本州ではあまり見られない立地が特徴です。ここからは付近の様子を、何枚か写真でご紹介します。





平たい断崖に立つ灯台が、なかなか最果て感出ているような気もしますが、いかがでしょうか。道東ではそれほど珍しくないのかもしれませんが。

岬にありがちなモニュメントも。上のほうに乗っかっている魚がいい味出してます。

最後に1枚写真を撮って、今回の本命スポットへ。
最果ての牢獄。北海道レトロな建築も魅力の「網走監獄」

さて、いよいよやってきました。本日のハイライト「網走監獄」です。網走市の名前を全国区に押し上げている最果ての牢獄ですが、現在は博物館として営業しています。早速中へ。

入口の様子。

ここまで長距離移動で小腹が減った方へのレストランも。監獄食が出てきますが、麦飯が塀の中の比率(3:7)なこと以外は割と普通です。

入り口近くの1枚。レンガ造りの重厚なつくりは、何となく大学のようです。お世話になりたくない施設ナンバーワンですが。

明治45年建築の監獄庁舎。重要文化財です。レトロかつしゃれた建築に北海道ロマンを感じます。

監獄内には、なぜか裁判所もあります。「監獄なのに何を裁くんだろう?」と思いましたが、どうやら他からの移築だそうです。

中は法廷が再現されていました。よくよく考えたらヘンですが、見学するときは違和感がなかったのが不思議です。

こちらは浴場。当時としては最新式の設備だったそうです。厳寒の網走では、お風呂の時間は待ち遠しかったのかもしれません。

さて、ここからは監獄本体である官房を訪ねます。特殊な構造が現代まで残されている、史料的価値が高い建物だそうです。

まず建物に入ると、写真のような中央見張があります。そこから45度ずつ5方向に向かって…

写真のようなまっすぐな通路が伸びています。誰が通路にいるか、中央見張から全て分かるわけですね。

部屋は入り口が低く、看守が歩きながら中をのぞける構造になっています。できるだけ目線を上げ下げせずに監視できるようにする工夫ですね。

囚人が食事をしている一コマ。服がオレンジ色なのは、脱獄したときに目立つようにするためでしょうか。

土地柄か、通路にはストーブもあります。均一に熱がいきわたるよう、いろいろ工夫がなされているようです。

ちなみに一棟は上の写真の通り、かなりの長さがあります。これが五方面に伸びている官房は空から見るとかなり絵になりますので、興味のある方は公式サイトをご覧ください。

ここまで近代的な構造の監獄を紹介してきましたが、工事に駆り出されるなどして、全員がいつもこのような建物に泊まれるわけではなかったようです。その場合泊まるのが写真のような「動く監獄」。まさに掘っ立て小屋です。ここで冬を越すとか……恐ろしい話です。

網走監獄の囚人たちの作業を物語るように、農作業の道具や…

鍛冶をしている様子の展示などもあります。監獄ができた当時の北海道は開拓時代のため、供給が十分でなかった物資はかなり自作をしていたようです。いろいろな作業に駆り出されていたようですね。
また、農作業のほかに道路工事などにも従事していて、この時の過酷な労働形態がタコ部屋のモデルになったとも言われています。特に北見市からオホーツクを結ぶ道路の建設は国防上も建設の大変さでも出色で、網走監獄でも説明にスペースを割いています。

その様子を詳しく説明しているのが、施設内にある「監獄歴史館」。上の写真の建物です。

説明パネルの見出しの時点で、すでに大変さが伝わってきます……。網走監獄がなかったら、北海道開拓の歴史も変わっていたかもしれませんね。

囚人たちが使っていた用具の展示などもあります。分かってはいましたが、過酷さが伝わっているものが多いです。

そんな酸鼻な展示を和らげるかのように、後半は現在の網走刑務所の紹介になります。近代的でピカピカの内装を見ると、「今は違いますよ」という職員たちの声が聞こえてきそうです。

最果ての牢獄・網走監獄は、やはり予想を裏切らない施設でした。実情はともかく、レトロ感のある建物は独特の美しさがあるので、道東に来たときは足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

ちなみに入り口近くにある人形は、過去最多の脱獄記録を持つ五寸釘寅吉という人物です。ただし網走では模範囚 だったそうで、普通に釈放されています。
おまけ:監獄だけじゃない! もう一つの流氷の町・網走の魅力

ここからはおまけとして、もう少し網走市のことをご紹介します。実は、前回ご紹介した紋別市と並ぶ流氷の町としても知られ、冬には砕氷船も運行されます。上の建物は、網走監獄の近くにある「オホーツク流氷館」。シーズン外でも網走の魅力を体験することができます。

先ほどの能取湖のサンゴ草も含め、網走の四季の魅力を紹介する展示もありますので、時間があれば寄ってみたいですね。

もう一つ、北海道立北方民族博物館も押さえておきたい展示です。今回は残念ながら入館時間を過ぎてしまったため、外見だけ。クチコミではかなりの高評価です。

この後はホテルに荷物を預けて市内の散策へ。道の駅・流氷街道網走に立ち寄ります。

ここで「流氷硝子館」というお店が目に留まったので、ご紹介します。

「流氷の町・網走」らしさをガラスで表現するコンセプトショップですが、上の写真にある「宙」という作品が印象に残りました。写真では伝わりづらいですが、窯変天目のようなキラキラ感が魅力です。網走に行った際は、ぜひ実物をご覧いただくのがよろしいかと思います。

最後は網走の隠れたソウルフード、オホーツク網走ザンギ丼をチョイス。複数のお店で売っていますので、食べ比べもおススメです。
今回は紋別市から能取湖、そして網走監獄の様子をお送りしました。さて次ですが、この辺で皆様にご紹介したい祭りがありますので、当シリーズはいったん中断させていただきます。この後も魅力的なスポットがありますので、再開まで今しばらくお待ちください。
次回は関東に戻り、冬花火の隠れた穴場・秩父夜祭をお送りします!
12/12追記:シリーズ再開しました。世界遺産・知床になります。下記リンクからどうぞ。
博物館 網走監獄のページはこちら
オホーツク流氷館のページはこちら
北海道立北方民族博物館のページはこちら
オホーツク網走ザンギ丼の紹介はこちら
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