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2021.08.03 博物館がゲームセンターに!? レトロ筐体も多数出展される名古屋市博物館の「ゲーセンミュージアム」

ゲームゲームセンター博物館名古屋市名古屋市博物館名古屋市営地下鉄愛知県桜通線

1978年のインベーダーゲームの登場によって一躍有名になった、ゲームセンター。実は60年代以前から存在していたのをご存知でしょうか。今夏、愛知県の名古屋市博物館では「ゲーセンミュージアム」と題して、黎明期から90年代にかけてのアーケードゲームを集めた、「遊べる」展示会を開催しています。インベーダー以前の史料価値の高いゲームも動態保存している、今回の企画。各ゲームの解説も挟みつつご紹介します!

今遊んでも楽しい? インベーダー以前の貴重な展示もある「ゲーセンミュージアム」第1会場

博物館の最寄駅・地下鉄桜通線桜山駅へとやってきました。名古屋駅からの所要時間は約17分です。

アーケードを通って、博物館まで2分ほど歩きます。

博物館前に到着。駅から屋根がついていて、雨に濡れないのはいいですね。

名古屋市博物館の外観。設立は1977年で、市街地ながら駐車場(70台)も用意されています。

特別展入り口のようす。展示は第1会場と第2会場に分かれており、写真の左手が第1会場です。早速入ってみましょう。

イントロダクションとして入り口に置かれた筐体。この台はプレーできないのでそのまま中へ。

午前中に訪れたのですが、既に多くの来場者で賑わっていました。家族連れのお子さんがプレーしているのが目立ちますね。ちなみに展示室内のゲームは全てフリープレイ(無料)です。

入り口近くには、昔懐かしいドライブゲームが。1959年にリリースされた「ミニドライブ」というゲームです(展示してあるのは1976年にバージョンアップされた「マーク2」)。

巻物状にしたコースの絵をベルトコンベアーの要領で流し、その上の車を操作する・・・というゲーム内容。ビデオゲーム以前に主流だった「エレメカ」と呼ばれるゲームの一つです。開発元の関西電気製作所はエレメカの分野では有名だったそうですが、現在は廃業しています。ちなみに創業者は京都出身だそうで、経営次第では第2の任天堂になったかもしれないですね。

壁には、当時の雰囲気を伝える新聞記事も。インベーダーゲーム登場後の記事です。当時のインベーダーブームはパチンコ業界にも大きな影響を及ぼし、改革を後押ししたと言われています。

1977年(昭和52年)の名古屋周辺のゲームセンター。世界初のアーケードゲームはアタリ社の「ポン」(1972年)と言われており、翌年には国産のクローンゲームが出回っていたそうです。インベーダー以前に、流行の下地はできていたわけですね。

アーケードゲーム中心ながら、ファミコンミニ四駆などの、同時代の流行も参考として展示されてます。

90年代のアーケードゲームを象徴する雑誌「ゲーメスト」。マニアックな攻略記事と、他の追随を許さない誤植の多さでも知られています。インド人を右に。

第1会場奥にはピンボールゲームの展示も。ビデオゲーム以前のクラシックな台から、90年台に発売された電子的なギミックのあるものまで色々揃っています。

ここからは、第1会場のゲームをご紹介しましょう。まずは「スペースインベーダー」(1978年)。一大ムーブメントを巻き起こした、シューティングゲームの金字塔と言える作品です。

開発元のタイトーはアーケードゲームで最も有名な会社の一つですが、創業者はユダヤ人で、日本の対ユダヤ政策の縁で1939年に来日したという、ちょっと異色な経緯を持った会社でもあります。河豚計画がなかったらスペースインベーダーは世に出なかった・・・と思うと、歴史のロマンを感じますね。

初期版は白黒だったため、写真のように背景に別の絵を重ねていました。これはこれでいい味が出ているような気がします。

続いては「ガンファイト」(1969年)。西部劇の決闘をモチーフにした、2人で遊ぶ対戦型ゲームです。

発売は、現在もアーケードゲームの第一人者であるセガ。創業は1951年だそうで、普段見慣れた会社の知られざる歴史の1ページを垣間見た気がします。

シンプルながら、筐体のガラス越しに見る景色の臨場感は、なかなかのもの。

相手の隙をつき、シェーンよろしく0.5秒の早撃ちで決着をつけてみてはいかがでしょうか。

その他、会場にはテーブルゲームのコーナーも。写真はブロック崩しゲームの「アルカノイド」(1986年)。声優の大山のぶ代さんが得意なゲームとしても知られています。

ブロック崩し自体はインベーダー以前からあったのですが、カプセルパワーアップやシューティングの要素を持たせることで、リバイバルヒットに成功した作品です。ファミコンで遊んだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

家庭用との違いとしてパドルコントローラーが採用されているのも特徴で、これによって微調整や素早い移動にも対応しています。十字キーとは操作のベクトルが違うので、慣れるまでは大変かも。

また、テーブル型筐体の場合2プレーヤーが反対側に座るため、2人プレーの場合1プレーごとに画面が上下反転するという仕掛けがあります。アーケードらしい工夫が随所に見られて、この辺は興味深いです。

テーブル型筐体は、今も一部のお店に設置されていますので、気になる方は探してみてはいかがでしょうか。(当ブログでは、こちらの記事で紹介しています。)

続いては、ピンボール台をいくつか紹介しましょう。まずは版権ものの「ウルトラアタック」。「帰ってきたウルトラマン」(1971〜72)のキャラクターがいるので、おそらく70年台のゲームと考えられます。

筐体内に3つのスピナーが配置されていて、ボールを弾きとばす仕組みになっているのが特徴です。予期せぬ方向にボールが飛んでいく不確実性が楽しいですね。

こちらは1991年リリースの「ターミネーター2」。ビデオゲーム全盛期にリリースされたためか、電光掲示板による情報表示など、新しい要素が盛り込まれています。

その他にも、年季の入ってそうな台がいくつもありました。日本のゲームセンターでは見かけなくなって久しいピンボールですが、北米を中心に今でも根強い人気があるらしいですね。

第1会場で最後にご紹介するのは、ビデオゲームの世界を現実に落とし込んだ「リアルインベーダー」と「リアルパックマン」。パックマンの方は足元にドットが置いてあり、実際にパックマンの気分を味わうことができます。

黎明期から1980年代前半くらいまでのゲームを集めた、第1会場。単純なゲームが大半ながら、どれもそれなりにプレーされていました。スマホゲーも根本のルールはシンプルなものが多いので、一脈通じるものがあるのかもしれません。

アーケードゲームの黄金期がここに! 「ゲーセンミュージアム」第2会場

第1会場から第2会場へ。駄菓子屋を模した通路にもいくつかゲームが置かれていました。

60年代のプライズゲーム。クレーンゲームも60年代には存在していたようですが、「UFOキャッチャー」(1985年)辺りからゲームセンターの主役になった感はあります。最近は消費税10%の影響で、クレーンゲーム専門店も増えてきていますね。

増加の背景には、消費税を転嫁し難い1回100円のビデオゲームと比べて、クレーンゲームはアームの強弱や景品で収益を微調整できるという、世知辛い懐事情もあるようです。

第2会場のようす。80年代後半以降の大型筐体、対戦格闘ゲームなどが展示されています。広めの展示室にアーケードゲームが置いてある光景は、なんとなくAMショーを想起させます。

博物館だけあって、展示されているゲームも個性的なものが多いです。まずは「アフターバーナーⅡ」(1987年)。セガからリリースされた、戦闘機をモチーフにした3Dシューティングで、プレーヤーの操作に合わせて実際に座席が傾くというギミックが特徴です。そういえば、映画「トップガン」の公開も1986年ですね。流行に合わせたゲームとも言えそうです。

次に紹介するのはこれまたセガの「ハングオン」(1985年)。セガの体感ゲーム第1弾としてリリースされたゲームで、実物大のバイクの模型に乗って操作します。コントロールもバイクを左右に傾けるというリアル志向の操作で、従来と一線を画する臨場感が話題を呼び、大ヒットした作品として知られています。

さらにもうひとつ、セガの体感ゲームをご紹介しましょう。「アウトラン」(1986年)は当時ポピュラーだったレースゲームに可動式筐体を用意した、「ドライブゲーム」としてリリースされました。ゲーム画面に映される車窓など、競技性だけでなく運転を「楽しむ」要素が入っているのはいいですね。メガドライブを始め、家庭用ゲーム機にも多く移植されています。

セガの大型筐体を一通り見たところで、今度は汎用筐体の方へ。現在もゲームセンターで主流となっている「アストロシティ」は、1993年に発売されました。「汎用筐体」の名前の通りソフトを入れ替えることで様々なゲームを稼働させることができ、縦画面のゲームにも対応しています。

写真の筐体に入っているのは「ハイパーオリンピック」(1983年)。専用コントローラー付きのファミコン版が有名ですが、初出はアーケードだったりします。16連射がもてはやされた当時の世相を反映してか清々しいほどの連打ゲーとしても知られ、ボタンがすり減っている筐体が多かったという話が残っています。

この辺りからは、今も稼働しているのを時々見かけますね。「ぷよぷよ」(1992年)は対戦型パズルゲームのパイオニアともいえる作品で、「テトリス」以降1人プレイが中心だった落ちものパズルに奥深い対戦要素を持たせ、大ヒットとなりました。

現在に至るまで公式大会も開催されている人気シリーズなのですが、開発元のコンパイルはその後の事業拡大に失敗して、1998年に倒産しました。当時はニュースでもずいぶん騒がれた記憶があります。

お次のゲームは、後世の対戦格闘のデファクトスタンダードになった「ストリートファイターⅡ」(1991年)。前作ではボタンを叩いた強さで大中小を打ち分けるという体感ゲーム的な要素があったのですが、今作以降は6ボタン(パンチ3ボタン、キック3ボタン)に統一されています。高い完成度に加え、対戦格闘という回転率の高い(1ゲーム数分で交代する)ビジネスモデルがゲームセンター側にも好まれ、90年代を通して人気のシリーズでした。

ちなみに対戦格闘自体は現在もリリースされているのですが、ユーザー間の実力差の拡大やゲームの複雑化などが原因で、今はマニア向けのジャンルとされることが多いようです。初代から「スパⅡX」までなら得意、という声も時々聞かれます。

こちらはセガの「バーチャファイター2」(1994年)。ストリートファイターⅡがドット絵の2D格闘だったのに対し、ポリゴンを使った3D格闘を売りにしていました。平面と立体というゲーム性の違いから、片方だけプレーしたという方も多いのでは。セガサターンで100万本以上売れたソフトとしても知られています。

展示されているゲームの中で唯一の対戦台(筐体2つを向かい合わせで配置)のためか、老若男女問わずプレーしている姿を見かけました。背後のプロジェクターで、ギャラリーアピールも抜群です。

ここからは90年代後半以降のゲームをご紹介しましょう。タイトーからリリースされた「電車でGO!」(1996年)。前代未聞の鉄道運転シミュレーションゲームとして登場し、前評判に反して新規層の開拓に成功しました。家庭用と比べて操作デバイスが非常に本格的なのが特徴で、運転手気分を存分に体感できる作りとなっています。

続いてご紹介するのはリズムアクションゲームの火付け役となった「beatmania」(1997年)。上から降ってくる指示に合わせて正確にボタンを押す、ターンテーブルを回すというシンプルの極地のようなルールながらゲーム性に優れ、多くの派生作品が登場しました。

展示されている「beatmania THEFINAL」(2002年)を以って初代筐体での展開は終了するのですが、後継作となる「beatmania IIDX」は今も新作がリリースされており、28作目になります。現在も初代筐体の一部の曲をプレーすることができますので、気になる方はお近くのゲームセンターに足を運んでみてはいかがでしょうか。

こちらも現在シリーズが続いているナムコの「太鼓の達人」(2001年)。マニアックな方向に進化していったbeatmaniaシリーズとは対照的にファミリー層重視の作風で、特別展でも一番行列ができていました。初心者に対する配慮が素晴らしい一方、プロのドラマー顔負けの神技プレイも時々見かける辺り、両方の層をうまく取り込んでいると言えそうです。展示されている筐体は2005年リリースの「太鼓の達人7」で、大幅なグレードアップがされたバージョンとして知られています。

最後にご紹介するのは出口付近に設置されていた「グランツーリスモSPORT」(2019年)。国民体育大会文化プログラムのeスポーツ選手権で採用されたゲームで、数あるレースゲームの中でも徹底したリアル志向が特徴です。

2019年のゲームだけあってグラフィックは他と比較にならないレベルですが、アーケードゲームの筐体でない辺りが最近のゲームセンターの立場を表しているようで、時代の流れというか若干の寂しさを感じる展示でもあります。

見終わった後は、特別展のミュージアムショップに寄ってから出口へ。気づけば2時間半も滞在していました。それだけ今回の展示が熱量に満ちていたということですね。

ちなみに名古屋市博物館の2階は常設展示室となっており、地元の歴史を展示品から辿ることができます。特別展も、比較的短いスパンでバラエティに富んだ展示をしていますので、公式サイトの開催予定をチェックしてみると気になる展示があるかもしれません。

特別展示室横の「考える人」に別れを告げて、次の目的地へ。お疲れ様でした〜。

名古屋市博物館の「ゲーセンミュージアム」いかがだったでしょうか。今回紹介した筐体は愛知県犬山市にある「日本ゲーム博物館」の所蔵品ですが、現在は休館しているようです。そのため、他の施設への出張展示も増えているようですので、もし見かけた際は、当記事の内容を思い出しつつ、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

名古屋市博物館「ゲーセンミュージアム」のページはこちら

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