2020.08.30 平清盛は貨幣経済の立役者だった? 日本史をお金の面から学べる日銀の「貨幣博物館」
紙幣の発行も含めて、日本のお金の全てを司る「日本銀行」。東京都中央区日本橋本石町に本店があり、東京メトロ三越前駅が最寄りです。ちょうど三井記念美術館が入っている、三井本館の裏手にあります。
実は、日本銀行に入場料無料の博物館があることをご存知でしょうか。人類の歴史になくてはならない位置を占める「貨幣」。今回は、日本の歴史を「貨幣」という視点から学べる、日本銀行金融研究所の「貨幣博物館」をご紹介します!
場所は日銀本館の隣。入場前には持ち物検査もある「貨幣博物館」
まずは銀座線・半蔵門線に乗って、三越前駅へ。駅名通り日本橋三越本店の前に出ます。
貨幣博物館は日本銀行の隣にあり、日本橋三越と三井本館の間を通ると早いです。ちょうど写真の場所を通ります。
路地を一本入ると、重厚な作りの日銀本館が見えます。貨幣博物館は道の向かい側にある分館の方です。
駅から徒歩3分、貨幣博物館に到着しました。
道の反対側に見える日銀の作りが素晴らしかったのでもう一枚。隣の三井本館といい、相当な資金と手間をかけているのがうかがえます。建築遺産50選にも選出されています。
貨幣博物館の入り口の様子。警備員もいるお固い雰囲気で、右に貨幣の垂れ幕があるのがささやかなアピールになっています。中は撮影禁止のため、ここからは主にテキストでご紹介します。持ち物検査を終えたら入場です。
平安時代は物々交換だった? 日本で貨幣経済が一度途絶えたワケ
貨幣博物館は、古代から現代に至るまでの貨幣の歴史を、豊富な資料とともに鑑賞できる博物館です。特に明治以降の紙幣・硬貨のコレクションが多く、現在流通している貨幣の一覧が見られるあたりはさすが日銀、といったところ。「このお札もまだ使えるのか」と驚くこと請け合いです。
また、歴史の方は歴史の方で、今までの固定観念を覆すような発見があったりします。例えば、学校の教科書に出てくる「和同開珎」。あれが奈良時代に出たので、その後の日本はずっと貨幣経済だったと思われる方も、いらっしゃるかもしれません。しかし、博物館の展示には平安中期に日本の貨幣が一度途絶したという、驚きの記述があります。なぜ一度流通した貨幣が衰退したのでしょうか。その疑問にも、展示内容は的確に答えてくれます。
平安中期というと国風文化が栄えた時期ですが、894年に遣唐使が廃止されるなど、対外的な貿易は衰退していました。その結果日本国内では主に輸入頼みだった銅が不足し、間に合わせるために鋳造の質を落とした結果、貨幣に対する信頼が失われたという背景があったそうです。
藤原道長の頃の都の経済は物々交換だったという、衝撃の事実。ちなみにお金の代わりには布や米などが使われていたそうです。でもそうなると「誰が貨幣経済を復権させたのか?」という疑問が頭をもたげます。
日本に貨幣を普及させたのは平家だった? 日宋貿易の意外な効用
その後、12世紀後半ごろから再び貨幣が流通しだすのですが、きっかけとなったのは「日宋貿易」でした。日宋貿易によって中国で作られた宋銭が日本で普及して貨幣経済が復活するのですが、そうなると貨幣経済を復活させたのは平家というこれまた驚天動地の結論が導き出されます。
平清盛は貿易のために大輪田泊(今の神戸港)を修築するくらい熱心だったので、貨幣経済復権の第一人者とさえ言えるかもしれないですね。実際は仏像鋳造のための輸入で、普及のために宋銭を輸入したわけではないらしいですが。
その後の結果が結果なので、どうしても「道長は勝者」「清盛は敗者」と位置付けられてしまうのですが、実は経済史の面から見ると、
道長・・・物々交換に対してロクな対策もできない経済オンチ
清盛・・・一度は衰退した貨幣経済を復権した立役者
という常識が吹っ飛ぶような解釈も可能なわけで、久々に面白い展示を見たという気になりました。
ちなみに貨幣博物館は、無料ながら資料がかなり充実しています。ありがたくいただいておきましょう。
また、特別展としてスポーツがらみの記念通貨の展示がありました。普段見る機会の少ないオリンピックの記念金貨や記念銀貨が見られます。
博物館を出た後は、中央通りへ。最近はコレド室町など、新しい施設の開業が著しいです。
駅周辺は、「日本橋とやま館」「奈良まほろば館」「三重テラス」といった地方のアンテナショップが多く出店しています。旅行もしづらい時期なので、ついでにアンテナショップ巡りなどして、ちょっとした旅行気分を味わうのも良さそうですね。
今回は日本銀行金融研究所の「貨幣博物館」をご紹介しました。知っているはずの日本の歴史も、「お金」という面から見ると、また違った発見があります。その他、普段見られないお札などを眺めるのもなかなか楽しいので、ちょっとした空き時間などに、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。