2021.05.16 1日350円で乗り放題!「台東・墨田東京下町周遊きっぷ」で行く下町散策(上野編その1)
下町で使える1日あたり350円のフリーパス「台東・墨田東京下町周遊きっぷ」。いよいよ最終回前半となります。ご紹介するのは、東北の玄関口・上野。江戸時代から現代にかけていくつもの変遷を経てきた、様々な側面を持つ街でもあります。まずは江戸から明治にかけて信仰の地を文化の中心地として作り直した、上野恩賜公園についてお送りします!
元は江戸城の鬼門除けだった上野の山。明治以降に文化の中心地となった「上野恩賜公園」
まずは本日のスタート地点、上野駅へ。写真に写っているのは駅の南に位置する広小路口で、アメ横や京成上野駅に近く、御徒町駅にかけての一帯はショッピングを楽しむ人で連日賑わっています。
一方、駅の北に位置する公園口は上野恩賜公園に面しており、公園内の諸施設にアクセスするのに便利です。上野と東京スカイツリーを結ぶスカイツリーシャトルの起点でもあり、台東・墨田下町周遊きっぷを持っていれば無料で乗車できます。上野駅にはその他にもいくつかの出口があるのですが、北南の位置関係を押さえておけば迷いにくいと思います。今回は公園口から散策してみましょう。
まずは日光、久能山、芝と並ぶ4大東照宮の一つ、上野東照宮へ。上野周辺は、江戸時代初期に寛永寺と、その敷地内の一社として上野東照宮が建立されたのをきっかけに、門前町として人が集まるようになったと言われています。寛永寺は明治元年の彰義隊の戦いで伽藍の大部分を焼失しますが、現在も恩賜公園のあちこちで、残された建物を見ることができます。江戸城から見て鬼門である北東に建設されたというのは有名な話ですね。
上野東照宮の社殿は1651年の建造で、明治維新、関東大震災、東京大空襲でも焼失しなかったことから、強運の神社として多くの信仰を集めています。建物自体は小ぶりながら、日光東照宮などと同じく黄金色の豪華な作りが特徴です。
また、東照宮の敷地からは寛永寺の残存伽藍の一つ、旧寛永寺五重塔(1639年建造・重要文化財)を見ることができます。現在では上野動物園の敷地内にあるため、動物園を訪れた際は間近で見るのをお忘れなく。
その他、寛永寺の建物として有名なものに、不忍池の中ほどに建つ弁天堂が挙げられます。他の建物と結構距離があるので、寛永寺の伽藍の一つと知ったときには驚いた記憶がありますね。明治以降公園として整備されたため、元のお寺の形が掴みづらいのが原因かもしれません。
不忍池は夏にはハスが咲き、スワンボートもあって都民の憩いの場として親しまれています。上野動物園の敷地が池側にもあるので、不忍池側から入場した方も多いのでは?
続いては、上野恩賜公園の竹の台広場へ。噴水もあり、この辺り一帯では一番広いスペースで、時々イベントなども開催されています。写真の左奥に見える東京国立博物館をはじめ、周辺には様々な施設がありますので、ここからはその一部をご紹介します。
まずは竹の台広場の北に位置する、東京国立博物館。本館・表慶館・東洋館などの複数の展示棟を持つ、日本最古の博物館(1872年創設)です。京都・奈良・九州の国立博物館にも入れる年間パスポートがありますので、何度も通いたい方にはオススメです。ラインナップは、日本を始めとしたアジア文化と日本画が中心で、国宝もよく展示されます。
続いては先ほど少し話題にした上野動物園。広場から西に位置し、上野恩賜公園側が正門となります。生き物を扱っているためか、2020年末から臨時休園が続いています。他と比べると、再開に時間がかかるかもしれません。2,400円の年間パスポートがありますが、東京・ミュージアムぐるっとパスで入場できるのでそちらの方がオススメです。
その他、東京国立博物館と並んで日本最古の博物館の一つとして知られる国立科学博物館も上野公園内にあります。1872年に湯島聖堂で開催された日本初の博覧会がきっかけで創設されたためか、現在も標本のラインナップが充実している印象があります。北の丸公園の科学技術館は比較的子ども向けの展示が多いですが、こちらは年齢関係なく楽しめると思います。
国立科学博物館のシンボルとも言える、シロナガスクジラの実物大模型。休業中でも外から見られるので、公園内散策の際はまずその大きさに圧倒されてみるのも良いかもしれません。他には入り口近くにあるSLもオススメの撮影ポイントです。
ル・コルビュジェの建築として世界遺産に登録された国立西洋美術館も上野公園内にあり、上野駅公園口と広場の中間くらいに位置しています。残念ながら2022年春まで臨時休館中ですが、常設展の西洋画のコレクションがかなり充実しているので、再開されたらぜひ行きたいですね。竹橋の国立近代美術館が国内の画家中心なのに対してこちらは海外中心のため、作品が被らないのもポイントです。
その他にも東京都美術館や上野の森美術館などもあるのですが、長くなってしまうので最後にオススメの施設をひとつ。写真の旧東京音楽学校奏楽堂は毎週日曜にミニコンサートがあり、日本最古のオルガンや、チェンバロの生演奏を聴くことができます(現在は休止中)。年間入場料は600円のため、古楽器好きの方にはぜひお勧めしたいスポットです。東京・ミュージアムぐるっとパスも使えます。
上野恩賜公園の博物館、いかがだったでしょうか。もともと寛永寺の敷地だったところを公園にしたため、旧伽藍に近代型の施設を上書きした感はあり、わかりづらい点もあるかもしれません。何度か公園内を歩いて、江戸から近代への時代の変遷を体感してみるのも良さそうですね。
ちなみに、上野公園は桜の名所としても知られ、春には特に多くの観光客で賑わいます。最近はインバウンドと酒盛りがないので控えめですが。
また、広小路側の入り口の桜だけは早咲きの品種が植えられており、2月末くらいから見頃を迎えます。一足先に春を感じたい方はぜひ。
今回はお寺の境内から公園へと変遷を遂げた、上野恩賜公園の様子をお送りしました。次回は戦後にかけて発展した繁華街・アメ横を始めとした、公園以外のエリアをご紹介します。